がんの免疫療法についての考察

東京女子医科大学 先端生命医科学研究所 有賀淳氏の論文を考察しております。

※ 下記リンクをクリックすると有賀氏の論文がダウンロードできます。

https://twinkle.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_action_common_download&item_id=22394&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1&page_id=49&block_id=53

免疫療法は、たしかに一見魅力的に見えるかもしれないが、エビデンスの欠如など多くの問題があることも事実である。論文にもあるNK細胞だけを活性化させて体内に戻す「NK細胞療法」についてコメントする。NK細胞というのは、細胞をチェックして同じ組織型でない細胞の場合は、すべて異常な細胞とみなして攻撃を仕掛けて排除してしまう免疫細胞だ。T細胞のようにがんに関する細かな情報は必要としないから、とても使いやすい細胞である。 NK細胞は攻撃型Tリンパ球に比べて攻撃力も落ちるため数が必要だが、体外で増殖させることよってそれらの欠点をカバーすることが可能だ。しかしながら、免疫細胞は異物の目印(抗原)に向かって攻撃を仕掛けるが、がん細胞のなかには正常細胞と同じ組織型の細胞を表面に出しているものも少なくないため、NK細胞だけでがん細胞をすべて駆逐することは不可能だという現実もおさえておくことが重要だろう。 最近発見されたNKT細胞(T細胞とNK細胞の両方の性格をもつ細胞)を使った「NKT細胞療法」は、NK細胞療法の進化したものと考えていいだろう。ヒトがん細胞を使い、ペプチドワクチンの確立は治験の規制改革とあわせて重要なポイントとなるだろう。